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2014年11月5日水曜日

米カンザス州の減税実験

法人減税は景気拡大を促し、結果的に税収を増加させるという「法人税のパラドックス」という考え方があるそうだ。減税は、国内投資を活発化させ、製造業の海外移転を抑制し、海外から投資を呼び込むことに寄与するという理屈である。

いささか旧聞ではあるが、米国のカンザス州が、2012年に異例の大減税を行った。個人所得税率は、高所得者で6.45%→4.9%、中所得者で6.25%→4.9%、低所得者で3.5%→3.0%に低下し、零細企業の法人税率はゼロになった。

翌13年には、予定されている売上税減税幅の大幅縮小など歳入増を狙った策と同時に、数年かけて個人所得税を更に低下させ、一定の条件を満たせばゼロとする計画が決定された。
http://www.cbpp.org/files/3-27-14sfp.pdf

しかし今のところ結果は芳しくない。歳入が減る一方、経済が低迷しているという。
今年6月末までの直近の会計年度で見ると、歳入は想定より3億3千万ドル、前年より7億ドル減少したそうだ。州の年間の予算規模は60億ドル前後なので、影響は大きい。雇用も個人所得も、全米の平均ほどの伸びを見せていないとのこと。
http://www.nytimes.com/2014/10/23/upshot/kansas-faces-additional-revenue-shortfalls-after-tax-cuts.html
http://www.nytimes.com/2014/06/30/opinion/paul-krugman-charlatans-cranks-and-kansas.html
http://www.forbes.com/sites/beltway/2014/07/15/whats-the-matter-with-kansas-and-its-tax-cuts-it-cant-do-math/

日本でも投資促進のため法人減税が検討されている。一部の論者は「グローバルな減税競争に乗り遅れるな」と檄を飛ばしているが、法人減税の経済全般に対するメリットが一体どのような条件なら表れてくるのか、しっかりした検討を行ってほしいものである。

政府税調の法人課税ディスカッショングループの今年3月の会合での資料に、法人税のパラドックスの包括的な解説があったので、後で読んでおこうと思う。一橋大学政策大学院の佐藤主水氏作成のものである([法D1-3]と書いてあるもの)。
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion3/2013/__icsFiles/afieldfile/2014/03/12/25dis31kai7.pdf
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/discussion3/2013/25dis31kai.html

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